バーのオーナーの話。

私は未婚の頃に呑みに行くのが好きで、行きつけになっていた店が何件かあった。そうなると飲み会が終わった後に飲み直しするバーも、だんだんと決まって来るものだ。

そのオーナーが経営しているバーには立地的な問題があったりで、正直に言えばそこまで回数通ったことがないんだけど、私が仲良しだった居酒屋のオーナーと友達で飲み会などで良く一緒になっただけのことだった。

破天荒な人で人を楽しませることを楽しみに生きているような、笑顔の素敵な人だった。

私が結婚して妊娠し出産している間に、彼は亡くなっていた。もう、彼の作った可愛いカクテルを飲むことも、美味しいパスタを食べることも二度と出来なくなってしまった。

どうせ最後に会った時も適当な会話で盛り上がって笑って、そんなものだった。もう彼と何を話したかなんて覚えてもいないけど、何故だかたまに彼のことを思い出す。

私が書いた小説の中のキャラクターを、世界のどこかに居る誰かが、そんな風に未来で思い出すこともあるのだろうか。

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